あたしをア・イ・シ・テ
危ない女 side:唯翔





「唯翔センパイっ、帰らないんですか?」


「あー…、あともうちょい」


その日は、土曜の午前練習で次の日は確か練習試合が入っていた。


午後からは芽衣と会う予定で、一人であと何回かシュートのイメトレをしてから帰るつもりだった。

そんなとき、マネージャーの相沢に声をかけられた。


「一緒に帰りませんか?待ってるので」


相沢はサッカー部で揃えた白のエナメルバッグを肩にかけ直しながら言った。

「いや、遠慮する。前にも言ったけど俺、彼女いるし」


前から何度か帰りやご飯に誘われたりしていたけど、芽衣以外の女と遊ぶ気もなかったし、全て断っていた。


よく懲りないな、なんて思っていた。


「…知ってますよ。これから会うんでしょ?」


「は?なんで知って…」


練習の汗とは違う嫌な汗が背中を伝った。


なんだ、コイツの表情…。

いつもとは180度雰囲気が違う。

< 135 / 179 >

この作品をシェア

pagetop