あたしをア・イ・シ・テ



階段の近くには野次馬がいた。

あんなにでかい悲鳴が聞こえたら人も来るか。


「あっ、唯翔くん、いいところに!」


3階へと続く階段のすぐ側で、座り込む女子の側にいた南川が俺を呼んだ。


待て、南川がいるってことは…


「芽衣が階段から落ちちゃって、膝打ったみたいなんだよね」


「ん…?唯翔?」


やっぱり芽衣かよ!

顔を上げた芽衣の目には少し涙が溜まっていた。


「階段から落ちた?」


いつもなら、ドジだな、って笑うところだけど相沢のことが頭をかすめて、俺は眉をひそめた。


「そう、たぶん1年の子なんだけど、後ろから私達を抜かそうとして芽衣にぶつかって、芽衣はバランス崩しちゃったの」


「で、その1年は?」


「わからない、走って行っちゃった」


くそ…、ほんとに相沢が…?

このままじゃ、芽衣がマジで危ない。


「とりあえず、ほら、芽衣。よっ、と。保健室行くか」


背中に手を回して俗に言うお姫様抱っこをする。

「え、ちょ、唯翔。歩けるから」

「いいから黙っとけ」

「私も行くよ」



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