あたしをア・イ・シ・テ



芽衣がこれ以上傷つけられないように離れるか…。


「唯翔先輩、逃げようとしてる?」


俺が半歩下がっただけで、冷徹な目を向けてくる。

相沢の比じゃない。


「ねぇ、私、唯翔先輩が好きなの、どうしてワカラナイノ?ねぇ、ねぇ!」


「うわぁっ!やめろ!」


谷口はナイフを持ったまま、俺を押し倒し馬乗りになってきた。


力が入らず、相手は女なのに起き上がれない。

「唯翔先輩は私のものなの!他の女になんて渡さないんだから!!」


ギラギラとした焦点の合わない目で見られ、俺の精神が崩壊しそうになる。


くそ…こんなやつにびびってるなんて。


「あぁ…そうだ…唯翔先輩が動けなくなれば…。そうしたら、丸ごと、私のモノ…」


ニタリ、と笑った谷口はナイフの切っ先を俺の喉仏辺りに向けた。


まさか、動けなくなるって俺を殺す気なのか!?


「ア…あの女の血のついたナイフなんて使えないね」


谷口は持っていたナイフを捨てると、また黒い服のポケットから同じようなナイフを取り出した。


いくつ持ってんだよ…。


俺はこんなとこで死にたくねぇ!


< 173 / 179 >

この作品をシェア

pagetop