友情のち恋、ときどき嵐。

「・・・っ・・」


和陽は、残った力を振り絞り、抵抗した。

さすがに、そこだけは嫌だ。

快感がないということは、痛みしかないということ。

和陽は縛られた足で、男の鳩尾を蹴った。


「・・このやろう」


男は握り拳を作り、再び和陽を殴ろうとした。


「・・・っ・・」


和陽は強く目を閉じた。

しかし、何秒たっても、痛みはなかった。

恐る恐る、目を開けてみる。


「・・・力無き者に、なにやってんのかな~、おっさん?」


そこには、家の向かいに住んでいる、蛇河 劉(たがわ りゅう)がいた。

お向かいさん、同級生というだけの関係である。

何故、劉がそこにいるのか分からなかった。


「・・何しやがんだ!!小僧!!」

「『何しやがんだ』・・・?それはこっちの台詞だっての」


劉は、男の腕を思い切りひねった。


「いてててててっ!!」

「痛いか?良かったな、生きてる証じゃねぇか」


劉の目は、全く持って笑ってない。

小学4年生なのに、握力が45ある蛇河は、腕相撲で誰にも負けない。


ゥ~ゥ~ウ~ウ~


警察のサイレンがだんだん聞こえてきた。


「もう、お前に逃げ場はねぇよ」

「ちっ」


男は、劉の手を振り払い、逃げ出した。

劉は、手に力を入れてなかったらしい。


「・・・おい」


劉は和陽を見て、しゃがんだ。


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