Dilemma
第1刻・始まりの刻
騒動の翌日。


「ふあ~ぁ。面倒臭ぇな、マジで」

「しょうがないじゃん。あれだけの騒動を起こしたんだし…そりゃ罰則もあるでしょ」

「大体私は関係ねぇのに!木倒れた原因はお前らだろ?」

「その場にいた連帯責任だって。もともと問題児扱いされてるし…」

「で?アイツはどこ行きやがった。」

「アイツ?」

「大気圏外野郎のことだよ!アイツが8割位の責任負ってるはずなのにどこ行った!」

「…用事あるから遅れる、だって」

はぁぁ、と志暢が深い溜め息を吐いた。
まったく、こっちだってそうだっつーの。


昨日、中庭の大木を倒してしまった私達は当然ながら、罰則を受けることとなった。
しかもあの大木は学園創立当初から生えている歴史ある木だったらしく…。


「それにしても、あの子もケガなくて良かったね。」

「あぁ、河森とかいうやつな。っつーかアイツは?アイツが木に登りさえしなけりゃこんなことも起こらなかったのに。アイツは罰則ねぇのかよ!?」

「あの子は、入学したばかりで校則もあんまり分かってなかっただろうから、仕方ないって。」

「じゃあ私達は!?私達も転校してきたばっかじゃねえか!校則なんて知らねぇよバカヤロー!」


「…高校生にもなって木を倒してはいけない、と知らなかったお前らは別、だってさ。」

「理不尽!!」

志暢は不満ありまくりでぶつぶつ言っているが、こればかりは仕方がない。


それに、私はもっと他のことが気になっていた。

棗が明かした理事長の存在、そして洗礼という名の私達への挑戦状。
今、棗本人が不在の為、その真意を問うことは出来ないが。

「…なんかこの学校来てからよく分かんないことばっか起こるね。」

どれだけ考えても、謎は増えるばかりだ。
自分達がこの学園に呼ばれた本当の理由さえも明らかになっていない。
個人的には、そっちのほうが大事な訳だが。


「…すぐ解ける謎解きなんて面白くねぇだろ。これくらいが丁度良いんだよ。」

「…なのかなぁ。」

「そうだよ。おっ着いた。」


話しながら、ようやく今回の目的地へと着いた。

今回の罰則は以下の通りだ。

『部室棟にある使われていない部屋を隅々まで掃除すること。』
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