Dilemma
校門をくぐり、三人は校舎に入った。


それぞれの靴箱で靴を履き替える。

「それでね、その私のお友達っていうのがものすごォォっっく可愛い子で…」


ものすごく、という言葉に妙に力を込めながら愛梨は熱弁する。

そんな愛梨の様子に二人はやれやれと肩を落とす。


「これだから二次元は…」

「その子ちゃんと三次元だから!現実に存在してるし大丈夫だからそんな目で見ないで!」

慌てて誤解を解こうとするも、二人は愛梨の言葉に聞く耳を持たなかった。


「性悪すぎて友達の一人も作れない二人はもう終わりだと思う」

「んだとコラ二次元このヤロウ」

「話きいてた!?」


愛梨の言葉を無視して行ってしまう二人に妙な虚しさを覚え、愛梨は追いかけた。


「ちなみにその子の名前は?」

教室の前まで来ると、棗がニコニコと微笑みながら聞いてくる。

ガラッと志暢は戸を開けた。


「あぁ、天野…」
「うわあっ」
「がふっ!!」

驚き飛び退いた志暢の肘鉄がもろに愛梨の顔面にヒットしたのだ。


「っびっくりしたぁ…」

「#$%$%#%$%$~!!!?」

あまりの痛みに床をのたうち回る愛梨。


流石の棗も驚いて声をかける。


「…一体どないしたんや志暢ちゃん」


「…見ろ人が倒れてる」

「いやあんたの目の前にも人が倒れてるんやけど…」

「…入った瞬間踏んじまった」

「いやだからあんたも目の前の人踏んでるから」


見ろ、と志暢が教室の中を指差す。
棗もつられて教室を覗き込んだ。


「…人が倒れてる」

「だからさっきからそう言ってんだろ!」


教室の中は他の生徒の姿は見当たらない。
ただ一人、倒れている少女を除いて。


「…大丈夫かー?お前なんでこんなとこで…」

志暢はしゃがみこんでツンツンと少女の体をつついた。


「…志暢ちゃん愛ちゃんの心配もしてあげて。痛すぎてブレイクダンス踊ってるわ、この子。」

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