恋なんてする気はなかった
I Want To Hold Your Hand
「よく食べるよね。」

ドライブスルーで買った照り焼きバーガーのセットを嬉しそうに頬張る姿を横目で見ながら理子がからかうと、

「理子、はいあーん。」

と、蛍は長いポテトを理子の口元に差し出した。

「いらない。さっき食べたばっかりでしょ。」

前方に目をむけたまま、冷たく言う理子に蛍はしつこくポテトを食べさせようとする。

「やめて。運転中だよ。危ない。」

「じゃあ、赤になったらね。」

蛍は理子の唇につけていたポテトを手を使わずにモシャモシャと食べながら、鼻唄を歌っている。

ビートルズのI want to hold your hand。

蛍はとても歌がうまいと理子は思う。
前に一度どうしてビートルズなんて知ってるの?と聞いたことがある。

「蛍くん、高校生のくせに。」

「高校生のくせに。」

蛍は心底おかしそうに笑った。

「高校生がビートルズ好きじゃダメなわけ?」

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「超いい天気。」

ハンバーガーで口をいっぱいにしながら蛍は助手席から空をのぞきこむ。

「早く俺も免許ほしー。」

その言い方が妙に切実でおかしい。
そもそも、免許はもらうものではなくて、取るものなのに。

「なに笑ってんの。俺だってあと1年したら18才だからな。」

車間距離を充分にとりながら、理子が横目で蛍を見ると、口のまわりに照り焼きソースをつけながら、眉間に皺を寄せていた。

「ソース、ついてるけど。」

信号が赤になった隙に、ダッシュボードのティッシュペーパーを渡そうとしたら、いいと断られる。

「まだ食べてるから。拭いたってどうせまたつくし。」

それよりさぁー、と蛍はポテトを理子の口元にもう一度差しだし、

「はい、ポテト。コーラも飲む?」

と、眩しそうに笑った。
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