真実の愛のカケラ
「拓哉さんなら、フランスの有名どころも、穴場スポット数多くご存知ですよ。

連れていってもらってはいかがですか?」


「え!?
連れていってって…、そ、それはまずいですよ」


あーあ。
あからさまに動揺しちゃってんじゃん。
でもまぁ、問題はない。

堺さんも、柚希が慌てることわかって言ってるんだろうな。
本当にこの人は…。


「堺さんは俺たちのことを知ってる。

この人は小さい頃からお世話になってる人で、隠し事はできないんだ。
してもすぐにバレるから。

それに、今はアパートの前にあるレストランの料理長をしてるのが堺さん。
だから俺の修行のことも知ってる」


柚希の前では温厚な老人でいるが、本当は厳しくて絶対に怒らせてはいけない人。


「へぇ。
何でも知ってるんですね」


「拓哉さんについて、知らないことなどありませんよ。
何か知りたいことがあれば、何でも訊ねてください」


この何でも知ってるという言葉が、大袈裟なんかじゃないから困るんだ。


「いいんですか!?」


隣から弾んだ声があがる。
目をやると瞳をキラキラさせている柚希がいる。


…やめてくれ。
柚希のことだから何を訊くかわからない。
でも相手が堺さんだから何を訊かれても答えてしまう。


窮地への追い込まれ方が唐突すぎるだろ。
< 58 / 240 >

この作品をシェア

pagetop