幸せのはじまり
初めての恋

「はぁ……いいなぁ…」
8月。
中学に入学し、漸く着なれてきたセーラー服をパタパタと仰ぎながら、窓の外を眺め溜め息をつく。

青く生い茂った芝生と煉瓦に囲われ窮屈そうに咲いている花ばな達。
そんな中庭のベンチで仲睦まじいカップルが見える。

―どんな会話をするのだろうか。
幸せそうな笑顔がちらちらと眩しい。

なぜか恋をしている人達は
やけに大人びている気がする。

周りがどんどん大人になっていくのを感じるのと同時に、自分がまだ子供なんだということを思い知らされる気がする。

自分も、早く大人になりたい。
目を細め、高科ゆきは再び溜め息をついた。

もうすぐ初恋が訪れることも知らずに……
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