麗雪神話~幻の水辺の告白~
『どうしたんだ』

不意に労わるような声音が頭の上に落ちて来て、セレイアは驚いて顔をあげた。

ヴァルクスが、優しく目を細めて自分を見下ろしている。

闇色の瞳に、吸い込まれそうだ。

なぜか、はかりしれない懐かしさがこみあげてきた。

なぜだろう。別に珍しいことではない。ヴァルクスとは、いつも、いつだって一緒にいるのに。

でもここがどこで、どうしてここにいるのか、なぜ彼がいるのか、何もわからない。

そう思った瞬間、二人の背後に景色が広がる。

ここはトリステアの街を見下ろす丘の上。

粉雪がふわふわと舞っている。

二人のいつもの場所だ。

そう、今日はまた、ヴァルクスと二人でプミラに乗って、ここまで来たのだ、と理解する。

『どうって、何が?』

『お前、元気がないだろ』

セレイアは思わず息を止めた。

どうしてこの人には、わかってしまうのだろう。

そう今私は、悩んでいる。何に悩んでいるのだっけ…。
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