麗雪神話~幻の水辺の告白~
一番大きな中心の建物が、国王―皇帝が政務をおこなう主宮殿であるとこっそり聞いたが、ほかの七つの建物がなんなのか、詳しいことはわかっていない。

それを調べるため、シルフェが今、空から偵察に行ってくれているのだ。

セレイアたちはその間、城壁がどれくらいの高さか、シルフェの風の力を使えない状況で逃げ出さなければならなくなった場合、どういう経路で逃げるのがよいか、などを調べるためにこうして王宮近くまでやってきた。

木陰から顔を出して眺めると、壁は高く、警備の兵の数が半端ではない。

「壁自体は…俺の氷の力で階段をつくれば、簡単に越えられると思う。すでにみつかっていて、逃げるだけなら、俺の力を使おう」

ディセルが冷静に分析した。

「周囲に燃やせそうなものはない、か…。
それだと逆に、王宮のどこかで炎が出たら驚くだろうな。陽動作戦ができるかもしれないぜ」

サラマスも作戦を考えてくれている。

セレイアは警備兵たちの得物に着目していた。

長剣、短剣、槍、弓…弩弓。いろいろな武器が網羅されている。彼らは相当戦い慣れている感じがするから、戦うことになれば、数も多いし、厄介かもしれない。

(できれば見つからずに…彼らとは戦わずに王とだけ接触して帰ってきたい)

偵察を終えた三人は、兵たちに見つかる前にさっさと退散した。
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