麗雪神話~幻の水辺の告白~
(あ……やっぱり)

腕には、紫色の斑点のようなものが浮かんでいた。

それは神が生涯に一度はかかるという、大人への通過儀礼のような病気の印だった。

一時的に高熱をだし、しばらくの間、自然を動かす力を扱えなくなる病気、「静力病」。

治療法はない。

ただ時の流れによって、自然と回復する。それが一週間のこともあるし、ひと月二月かかることもある。

(まさかこんな時にかかってしまうなんて…!)

風の力がなくては、シルフェなどただの非力な少年だ。

「さあ、薬を飲め」

「うう……」

「飲まないなら無理やり飲ませるぞ」

こんなことですら、まともに抵抗できない。

(これからどうしよう……)

シルフェは仕方なく、苦い薬に口をつけるのだった。
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