麗雪神話~幻の水辺の告白~
町はずれまで早足で移動してから、道端に座り込んで、食事タイムとする。

ディセルはばくばく食べ始めたが、セレイアはとてもそんな気分にはなれなかった。

むろん、おなかはぺこぺこだ。食べ物を欲している。けれど、そんなことどうでもよくなるくらいに、今のセレイアには心配事があった。

「セレイア、食べないの?」

「………だって……」

セレイアは沈鬱な表情でうつむく。

二人の仲間、シルフェとサラマスのことが、気にかかって仕方がないのだ。

あれから何週間もたつのに、シルフェからの風を使った手紙はいっこうに届かず、行方は杳として知れない。サラマスは地下牢に入れられてからどうなったのか、逃げ出したのかもわからない。もしや何か刑などが決まってしまったのかも、と思うと、いてもたってもいられないのだ。

“また”大切な人を死なせてしまうのでは――

その恐怖は日に日に大きくなり、セレイアを蝕んでいった。

「セレイア。今は体力をつけておかなくちゃ。食べた方がいいよ」

「………うん」

セレイアは勧められるままにナンを口にしたが、味らしい味などわからなかった。

無理やり咀嚼しながら、考える。

けれど考えても考えても、よい考えが浮かばない。

「ディセル。私やっぱり、もう一度皇宮に――――」

「だめだ」

諭すように、ディセルが静かに告げた。

「危険すぎる。第一、もうシルフェの風で空を飛べない。ってことは、見つからずに侵入する術はないってことなんだよ」

そんなことは百も承知だ。

それでも助けに行きたいのだ。
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