麗雪神話~幻の水辺の告白~
ディセルにそう提案しようと顔を上げたセレイアの視界に、華やかな色が飛び込んできて、思わずセレイアはそちらに視線を向けた。

赤、青、緑―華やかな色合いは、店先に並んだ花のものだった。

どの花も霧吹きでたっぷり水分を補給してあるのか、しずくが光を弾いてとても美しい。

わずかに気持ちが和んだ。

美しいものを見ると、どうしたって気持ちは少し上向くものだ。

隣を歩いていたディセルは、セレイアの視線の先を追って、微笑んだ。

「今日は花でも買っていく? 少しでも暗い気分が和らぐなら」

ディセルの優しさが胸に沁みる。

けれどセレイアは緩く首を振った。

「花瓶もないし、もったいないわ。
でもそうね…もう少し近くで見て来てもいい?」

「ああ、いいよ。俺はここから見てるから」

「うん」

セレイアはそっと、花屋に近づいた。
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