本当のわたし

side☆夏川優希

「みーちゃんは?どうしてこの高校受験したの?」

辻本さんのその言葉に一瞬顔が暗くなったのは俺の気のせいだろうか。

「へ?あたし?あたしは…みなちゃんがこの高校に就職するって言ってたし、優也も同じ高校に来い!とか言うからさ」

なんて淡々と答えるけど本当は違う気がした。矢作先生がいるからって言うのは本当のような気もするけどもっと他になにか深い理由がある気がする。

「お前ら2人は?」

春樹から飛んできた質問にどう答えて良いのか分からなくなった。
たぶん春樹は俺の事情を色々知ってるからこその純粋な疑問。
俺が「七瀬」ではなく「夏川」を名乗っている事についてなにも聞かないのは春樹の優しさなんだと思う。

「俺らは…」

俺が言葉に詰まっていると俊がいつもの明るさで代わりに答えてくれた。

「俺が誘ったんだよ!ここに行けばただで芸能人見れるし、優希の家から近いから良いじゃん!ってな⭐︎」

俊の明るさと地の頭の良さにはいつも助けられる。俺が答えたくないのを知ってるからそれらしい答えを言ってくれた。
本当に昔からこいつには救われてばかりだ。
でもきっと察しの良い三木はなにかを感じ取ってるんだと思う。さっきから難しい顔をしてるしな。

そんな顔をしてほしくない。
三木にはさ笑っててほしいんだよ。
三木が幸せでいてほしい。
こういうのを恋と呼ぶんだろうけど、俺はこれを恋と呼んではいけない気がする。
たぶんもっと複雑でもってはいけない感情なんじゃないかと思うんだ。

「はいはい。休憩終わり!三木ここ教えて!」

どうにか三木にそんな顔をするのをやめてほしくて話を無理矢理閉じた。
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