お隣さんと内緒の恋話
葵の姿を探して教室内を見回すと、葵はいないが壮真が近寄ってくる。
葵、どこ行ったんだろ…
「 椿~ なに2つもパン持ってんだ、欲張りな奴 」
欲張り!?
「 お前 食いすぎんなよ?」
「 うっさい、壮真に用はないの!ねぇ その… 上山くん見なかった?」
私は葵を見なかったかと聞いたが、壮真は首を横に振った。
私はパン片手に教室を出て 図書室のある階を過ぎる階段を駆け降りようとしていた。
葵、どこ~
「 椿!」
えっ…… あ、なんだ玲音…
どうしよ、葵に会いたいのに…
「 来いよ、珍しく誰もいねぇし 」
「 うん…」
葵に会いたい気持ちが 玲音との約束を忘れていた。
図書室へと入る私と玲音。
あまりの静けさに 唾を飲むのさえ聞こえてしまいそうだった。
「 椿… この前、上山といたじゃん、送ってもらった時。ほんとに関係ないのか?」
また誤解を…
「 違うって何度も言ったじゃん、先生には送ってもらっただけだし、いつも誰かしら女子が囲んでるから 話なんてまともにできるわけないよ。
玲音の勘違いだから 」
「 ふぅん… あんな偶然ってあるのが不思議だけどな 」
しつこい~
どうしたらわかってくれるの!
「 なぁ、椿… 上山やめて俺を選べよ 」
玲音…
「 あのね… ごめん。好きな人がいるの、彼が大好きなの… 付き合ってるから 玲音とは… 友達でいたい 」
「 は!? 彼氏って、おま… いつのまに… 誰だよ 」
えっ、1回そう言ったよ… 聞いてないんだから。
もう言うしかないよね、うん。
「 か、上山…」
「 はいはい、お呼びかな?」
「 上山!!」
み、みみ…雅くん!なんでいんのっ
私は上山葵と言いかけて、玲音と雅の声が重なり、誰もいないはずの図書室内奥から 雅が出てきた。
「 椿… 上山だろ、彼氏って。まさかの禁断とはな、さすがにビビる…」
ちょっと!!
ビビらないし違う!
「 違うって言ってんのに なんでわかん…っ 」
え… えっ、なにこれ…
大きな声を出す私の唇に、雅の人差し指が添えられ言葉を止められた。
「 あ~あ、上山先生が相手じゃ勝つ気が起きねぇわ。仲を裂いてまでなんて気はないよ、マジなんだろ?」
もしもし? 玲音、あんたって理解力ゼロだね。