窓際の山河くんの隣は。

「あのさ、この絵の裏に、笹本のサイン書いてよ」

「え?」

「いつかお前が有名になった時、周りの奴らに自慢したいから」


また、私の心臓が音を立てた。
そんな笑い方するから、私の心臓は持たないよ……


もう、私は自分の気持ちに気付き始めていた。


私は遠慮がちに小さく自分の名前を書き、また山河くんに渡した。

「俺、これ部屋に飾っとくから」

そう言って子犬のように嬉しそうにする山河くんを見て、私までつられて笑った。

なんだかとても照れくさかった。
人に絵を褒めてもらえることは、本当にうれしかった。


「でも、私有名になんか絶対になんないよ」

「なんで?」

「お母さんに反対されるに決まってる」


私はうつむいて弱弱しくそう呟いた。
そんな私を山河くんはただじっと静かに私を見つめていた。
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