ツレない彼の愛し方【番外編追加】


ダルいな。
最近、朝起きるのがとても辛い。
風邪でもひいてしまったかな?
睡眠時間は足りてるはずなのに、ココ数日の出来事が重く心と身体にのしかかってる。

食欲もなく、大好きだった朝のコーヒーも飲む気になれない。
通勤がない分だけ助かっている。
ホントは気分が優れない一番の原因が何だか自分でもわかってる。
あのパーティ後で見た社長と綾乃さん、そして修二との会話。

私の憂鬱な気分はこれが原因だとわかっている。
あれから社長とは普段とかわらない生活を送っている。
多忙を極めている早瀬はあの日から私の部屋には来ていない。
社内にだってほとんどいないのだから仕方ない。


朝、出勤しようとした時、玄関にクリーニング屋から返って来た上質のジャケットが目についた。
パーティの日、垣内部長が私の肩にそっと羽織らせてくれたジャケット。


「早く返しに行かないと…」


私は今日一日の予定を頭の中で組み立てながらエレベーターを待つ。
上から下りて来たエレベーターの扉が開くと、予想通り、早瀬が乗っていた。


「おはようございます。」
「ああ。」


元々、ぶっきら棒で愛想がない早瀬が、どうしたら綾乃さんの前であんな風に笑うのかと思ったら、また胸が苦しくなってしまう。


「どうした?」


「何がですか?」


いつもはたわいもない会話をする短い時間。
それも私が話しかけなければ会話が始まる事は無い。
今日は口を開くことに躊躇いを感じ、つい無口になる。


「いつもベラベラとうるさいくらい朝からしゃべるのに、変なものでも食ったか?」


「食べてませんし、特に話す話題もありません。」


「何をそんなに機嫌が悪い。」


「上機嫌です。」


「……!」


6階から1階に降りる時間は1分もかからない。
社長の次の言葉が耳に届く前に、開いた扉から早足で会社の扉を目指した。



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