8月の雪


一ガラッ


「やっぱり、ここにいた。」

「何やってんの?律とデートだろ!?」

「その前に、用があったから…」


肩で息をしながら、美紗は病室に入って来た。

俺の目の前に止まると、
黒い鞄から真っ青なリボンで閉じられた白い袋を、
俺に手渡した。


「…何これ?」

「宿題にでも見える!?」


美紗の質問に対して、首を横に振ると、
一息着いて口を開く。


「誕生日、おめでとう。
…それプレゼント」


それだけ言って、放心状態の俺を置いて、美紗は足早に出ていった。


まさかあいつが覚えてるなんて…。

俺でさえ忘れてたのに。


「祐、今日誕生日なんだ〜
じゃあお祝いしよっ!?」

「はっ!?何言って?
っつかいいしそんなの」

「よくない!絶対するのー」


勢いよくベットから出ると、俺の手を引いて、
病室を出て向かったのは、ナースステーション。




「お願いっ!!
嶋さんなら分かるでしょ〜?」

「あのね芙由ちゃん。
いつも言うけど、そういうのはまずご両親の許可がなくちゃ…
それに、芙由ちゃんにもしものことがあったら」

「嶋さんっっ!!」

「………!?」


いつも穏和な芙由が珍しく大きな声を出したせいか、
ナースステーション一帯は静かになった。
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