8月の雪


「…じゃっ頑張るよ?」

「うん。本当にありがとう…」


そう言って笑った金井を抱きしめそうになったけど、
早く行かせたい気持ちを優先させた。



全部じゃないけど、俺は金井の相談を受けた。

まだ祐にも言ってない、秘密の友達の話。


「…頑張れ…頑張れ…」


何度も金井の背中に向かって呟いた。




まだほんのり微かに香る桜の香り。


俺は、初めてちゃんとした気持ちを胸に宿した。


そこら辺にいる、ミーハーな男共とは違う感情。



ゆっくり…ゆっくり…

俺の歩くペースと一緒に、
心地いい心臓の音が聞こえる。




まだ幼かった俺の…



あの日の想いは





何処に行ったんだろうか…




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