8月の雪
キミの時間




きっとこんなに緊張したことは、まだ一度もないと思う。


それくらい、俺の心臓は激しく波を打っている。


微かに揺れ動くにぎりしめた拳。

心地いい秋の風が、俺の頬を優しく撫でる。


空をぼんやりと眺めている芙由は、いっこうに口を開こうとしない。

そんな芙由を、ただ真っ直ぐに俺は見つめている。


はぁ〜、と軽く息を吐き、冷たいコンクリートの上に座った。


「…祐…私に聞きたいことあるでしょ?」


カタン、と小さく音を立てる策を、力強く芙由は握った。


「…あるよ、たくさん…」


そう言った俺を見て、芙由は小さく笑った。


「…じゃあ話すね?こないだ、倒れた理由」


芙由は俺の前に座ると、ゆっくりと重たい口を開いた。




< 96 / 111 >

この作品をシェア

pagetop