優歌-gental song-
「なんでもできるんじゃないかなって思えてくるの」


彼女は目を閉じて、穏やかにほほ笑んだ。


「千尋くん、どうしたの?

なんだか、元気ないね」


優歌さんはぼくを見るとそう言った。


「そうかな。そんなことないよ」


ぼくは平静を装ってそう言った。


口が裂けたとしても、優歌さんのことで悩んでる、なんてこと、言えるわけがなくて。


優歌さんはとても心配だ、と言わんばかりの瞳をぼくに向ける。



「そうかな」


「そうだよ」


じゃあ、と優歌さんは言った。


「何かつらいことやかなしいことがあったら、私に言って。


私なんて何もできないけど、でも、話を聞くくらいならできるから」



ね、と微笑まれる。


「優歌さんもだよ」とぼくは言った。



「優歌さんも、何かつらいことやかなしいことがあったら、ぼくに言って。


大丈夫、ぼくは口が固いから」


優歌さんは少し驚いたように目を見開いたけど、クスッと笑った。


いたずらっ子のような愛らしい笑顔だった。



「約束、ね?」


優歌さんは小指を立てて言った。



「うん、約束」



ぼくは遠慮がちに小指を差し出した。


優歌さんはぼくの小指を自分の小指に絡めとって、ぎゅっと握った。


驚いて彼女の顔を見ると、彼女はニコニコと笑っていた。




どくん、どくん。




心臓の鼓動が、鳴りやまない。




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