王子サマは料理人―コブタちゃんと双子さん―

トミさん



昨日はいろんなことがあった。心からそう思う。

むしろ夢なんでない?

今日の授業が終わりに近付くにつれ、あまりにぶっ飛んだ出来事を私はそう考えるようになっていた。
そんな6限目が終わった午後4時半のこと。

授業も終わり、皆が部活やら帰宅やらでざわめく教室。見覚えのある女の子が教室の入り口にいた。
真面目そうな、さらさらとした髪をきれいに整えた女の子。
そうだ。彼女は。

「昨日の……」

そう思い出した瞬間、ぱっと目があう。

「あ。いた、」

私を指差し、彼女はそのままずかずかと歩き出す。

「あなた……えっと名前は、」
「み、三倉あんず…です……」
「私はトミ。三倉さん、今お時間いいですか?」

昨日のことで話が。トミさんは声をひそめる。
やはり昨日のアレは夢ではないのだ。嬉しいようながっかりしたような不思議な気持ちになる。

私は首を縦にふり、立ち上がった。
< 10 / 13 >

この作品をシェア

pagetop