禁断のプロポーズ
「私も……同じです」

 ようやく少し離れた夏目にそれだけを告げる。

「これが貴方の仕掛けた罠でも今は――」

 今は騙されていたい。

 そう思う未咲に、夏目がもう一度、さっきより、ゆっくりと長く、口づけてきた。

「障子が開いてるぞ」

 離れた夏目が少し笑ってみせる。

 さっき、塀の切れ目を気にしていたからだろう。

 もう、と赤くなり、逃げようとしたが、そのまま抱きしめてきた夏目の腕が逃がさない。

「……見てないよ。
 誰も見てない」

 そう囁き、夏目はもう一度、唇を重ねてきた。

 開いたままの障子から聞こえていた、溢れ返るような虫の音も、やがて、耳に入らなくなった。
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