空っぽのイヤホン(仮)
「俺、夏が終わったら引っ越すんだ。
…親の再婚。」

五十嵐は、笑ってるつもりだろうけど
全然笑えてなかった。

「夏休みに入ったら、北海道行くんだ。」

「ほっかいどう…?」

言われた言葉は現実味がなくて
どこかボーッと聞いていた。

「遠いでしょ。」

無理やり引き上げた口なんて見たくない。
寄せるのを我慢してる眉なんて、全然見たくないよ。

でもきっと、五十嵐のこの顔は
聖奈さんっていう人のためのものだ。

「夏休みって、あと…」

「2週間。」

左手の人差し指と中指をたてる五十嵐。

そんな顔しないで、と言われると
余計に悲しくなった。
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