藍くん私に触れないで‼

中学までは学校までいつも送り迎えがついていたのだが、
高校に入ってからはやめてもらうようにした。

この潔癖症のおかげで色々と生活が普通とは異なってきていた。
うちの家柄に甘えて、週二の割合で家はお手伝いさん総出で大掃除してくれるし、
家の歯磨きも箸もカミソリも全て使い捨てのものだ。


そうして毎日気持ちよく過ごせるのは良いことだが、
世間はそのようにはいかない。

道端にはゴミが落ちているし、虫は飛んでるし、品のない人もたくさんいる。


だけど、さすがにそろそろこの世の中に適応しなければ、私はいつか死んでしまう気がするから。


学校はまだ近いので電車に乗らなくてすむので助かる。

満員電車という恐ろしいものがあるらしい。
想像しただけでも寒気がする。


日傘をさしてのんびり歩く。
今日はいい天気だ。

少し日差しが強いが、気温も湿度もちょうどいい。

過ごしやすい日だ。




いい朝だ、

いい朝なのだが、
1つだけ、気に食わないことがある。



「やぁだ~、もうたっちゃんたら、どこ触ってんのよ~」

「いいだろー?俺ら付き合ってんだからよぉ」



化粧の濃い女子高生に、ワックスで固めた髪が変な方向に跳ねてる男子高校生。

更にお互いベタベタと引っ付きあって、変な言葉遣いだ。

汚らわしい。



しかし、私ももうこの風景には慣れた。

だいぶムカムカするが、そのカップルを無いものとすることで、その場を回避する。


まったく、
特に可愛くもかっこよくもない人たちがベタベタとしているのはなぜこうも腹が立つのか。


私なら到底不可能だ。

そんなことしたくもない。


藍くんは別だけどな。


藍くんは美しいから、藍くんがどこに触れようと私は一向に構わない。
むしろ触れてもらいたいくらいだ。


私も、藍くんになら触れられる。
藍くんにふさわしい女性になるためだけに今まで生きてきたのだから。


私にはもう藍くんしか考えられない。


次に会うのはいつか分からないが、

きっと藍くんも、同じ気持ちのはずだ…







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