冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(11)

 その晩、エルダがリューリを見かけたのは、偶然だった。

 ひどく寒さがこたえたエルダは、オニギス育ちのリューリも寒さに
 震えているだろうと思い、余分の湯たんぽを持ってリューリの寝室
 にむかった。

 でも、回廊の角でリューリの姿を見かけた気がして、エルダはリューリ
 の後を追った。


  (やっぱりリューリ様だわ、こんな時間にどちらへ、、、?)


 リューリはひどく早足で歩いている、後をおうのは大変だった。


 普段はあまり使わない回廊を通って、リューリは歩いていく。

 そしてたどり着いたのは、機織り部屋だった。


  (まあ、リューリ様ったらこんな時間にまで、隠れて機織り
   をなさっていたなんて)


 一言お小言を言おうと、エルダが部屋に近づいたところで足音がして
 エルダは咄嗟に物陰に身をかくした。

 扉をノックする音がする。

 続けて扉が開かれる音がして、リューリの声が聞こえた。



 そこでエルダはさっと首をのばして、機織り部屋の方を見た。

 そこにいたのは、ダニエル=ウインギュスター卿。



 エルダは腰を抜かさんばかりに驚いた。


  (リューリ様が、ウインギュスター卿と逢い引き?!)


 そんな、リューリ様にかぎってそんなことは、、、。

 エルダは体ががくがく震えてくるのを感じた。

 頭がぐるぐるする。

 リューリ様は皇妃だ、それなのに他の男性と通じたとなったら
 いったいどうなるか、、、。
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