冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(15)
 
 四ヶ月後、アシュレはオニギスの宮殿の広間に座っていた。

 目の前には、オニギスの王族が並ぶ。

 その一人が長い式辞をのべている。

 アシュレはふと、隣をみた。

 そこには主のいないからっぽの椅子がひとつ。

 そこに座るべき人は、今はいない。

 アシュレの顔が苦しげにゆがんだ。



   「よって、パズラーン運河の交易権は、オニギス、クルセルト
    両国が平等に管理し、広く民の交流を図るものとす。
   
    それでは、両陛下、ここに調印を。」



 長い間、不平等に扱われていた交易権は、国の管理下におかれ、交易は
 広く民にひらかれることになった。

 アシュレが強く望み、リューリとともに押し進めてきた計画が、
 身を結んだのである。

 このことにより、オニギスとクルセルトの国交はさらに広く、強く
 なることは間違いなく、それは真の平和へと繋がる道に他ならない。


   (それなのに、、、、)


 今日、この場にリューリはいない。

 アシュレは唇を噛み締め、わきあがる不安と空しさに堪えた。

 本当はリューリもここに一緒にいるはずだったのに、、、。



 そのとき、アシュレのそばに従者が近づき、そっと告げた。

 「国元より早馬がきております、使者は別室でまたしておりますが、、、。」

 「なに?、、かまわんここに通せ。」

 「しかし、、、」
 
 「私の命令が聞けぬか!」

 「はっ」
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