冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(5)

   「お帰りなさいませ。」



 内務執官のハドリーが、満面の笑みで、出迎えてくれた。

 ハドリーの後にひかえる三人の執官達も、リューリに暖かい笑みを
 送ってくれる。


  (帰ってきた、、、)



 そう思いリューリは、ほっと安堵のため息をついた。

 あんなに厭だったクルセルト城が、今では自分の家なんだと感じる。

 ただ、ひとつの事を除いては、、、。



   「謁見の間にて、陛下がお待ちです。」



 ハドリーが告げる。


  (逢わねば、、、)


 リューリは先程とは、まったく違う意味のため息を落とす。

 そのため息は、誰にも気づかれぬうちにリューリの足下に消えて
 いったが、リューリはそのため息がいつまでも、重く足に纏わりついている
 ように感じた。
< 51 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop