冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
先程までの射すくめるような視線はもうなかった。
かわりに労るようなやわらかい目でアシュレはリューリの
腕をみている。
リューリは体の強ばりが溶けていくように感じた。
アシュレに握られた手首も、視線をむけられている腕も熱い。
アシュレの指がやさしく動くたび、体の奥底からざわざわする
気配がわきあがってきて、体の中に熱が籠っていくようだ。
(なぜそんなふうにやさしくするの?
そんなふうにやさしくされたら、、、。)
体の中にたまった熱が、リューリの中の何かを溶かしていく。
思えば、リューリがアシュレを拒絶したから、アシュレはリューリを
抱こうとはしなくなった。
もし、私が望めば、、、、。
この得体の知れない熱に身を委ねてしまえたら、、、。
「陛下、、、。」
「なんだ。」
「、、、私が、、、、もし、私が望めば、、、、。」
そこまで言って、リューリははっと我にかえった。
私、今なにを言おうとした?
「何を望むのだ?」
リューリは、アシュレにとられていた腕を、慌てて引っ込めた。
「いえ、、、何でもありません。」
リューリは、すばやく寝台から降りると、扉までを駆けた。
「まて!」
アシュレが呼び止めたが、リューリは振り返らなかった。