冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 幾重にも光を重ねるシャンデリアが煌めく、夜会の華やかさに
 すでに皆、酔っているのか、広間は明るい喧噪に満ちていた。

 アシュレとリューリが、広間のなかへ歩をすすめると、騒がしさは
 ぴたりとおさまり、皆誰もが、腰をおり頭をたれる。

 玉座までたどりつき、くるりと振り向いたアシュレが



   「よくお集りくださった。今宵は皆、寛ぎたのしまれよ。」



 と声をかけるとともに、優雅な舞踏の音楽が奏でられ、踊りの輪が
 ひろがっていく。


 見るともなく、踊りの輪をながめてたリューリに突然アシュレが問うた。



   「踊らないのか?」

   「えっ、あ、踊れない訳ではありませんが。」

   「お妃教育でダンスもならっているだろう?」

   「はい。」

   「では、踊るか。」



 そう言って、アシュレはリューリをじっと見つめた。


 夜色の鋭利な瞳は、リューリを捉えてはなさない。

 リューリは声がだせなくなるのを感じた。

 以前のような射すくめるような眼差しとは違う。
 
 でも、リューリを捉えて、はなさない強さのある眼差し。


 アシュレの手がリューリにむかってのばされた。


  (この手を取れば、二人でダンスを踊る事になるの?)


 リューリがおずおずと手を差し出した時、



  

 
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