キャラメルに恋して



「なぁ、雛。遊園地のラストって言ったら何だと思う?」


枯葉がサラサラと風に乗って何処かへ行く中、隼人が言った。


「えぇー。う〜ん………、やっぱり観覧車………かな?」


「じゃあさ、観覧車のろ?」


そう言った隼人の顔は夕日のせいか、キラキラと輝いて優しく微笑んでいた。


隼人は、私が心細いっていうのがわかったのかな?



“うん”と隼人に言おうとすると……「走るぞっ」そんな言葉と共に私達はまた、走りだした。


他のお客さんたちが、出口に向かって歩いてきている中で、私たちだけがその流れに逆らって走っていく。


走っているせいで、私と隼人は「なんだなんだ?」っと注目の的。


そんな視線を振り払うようにして、大きな観覧車に向かって行った……。



「ではごゆっくりぃ〜」


店員さんの愛想のいい言葉と共に、ギリギリセーフで観覧車に乗り込んだ。



『ハァハァハァ……』



はぁ………。いったい今日、どれだけ走ったんだろう。


観覧車の中には、2人の荒い息の音が響き続けている。



しばらくたって、荒かった呼吸も少しずつ収まっていった。


荒かった息が消えていくと、ゴンドラの中は急に静まり返った。





………………。


何故か、さっきから一言も喋らない隼人。


気まずさが、一気に上がっていってしまう。


話そうとしても、すぐしらけてしまうのが目に見えていたから、私もなかなか話しだせないでいた。


だって、話すっていったって何を話せばいい?


「疲れたね」とか?

「楽しかったね」とか?



それだったら、「うん」の一言で返されて会話が続かなくなっちゃう。



「お化け屋敷……」の事は、あんまり出さないほうがいいかも…。隼人だってプライドはあるもん。



あぁ…。どうしよ………。



―――――…ゴトッ


どちらかが、少し動くたびに揺れてしまうゴンドラ。


――――ゴトゴト


次に、さっきよりも少し大きな揺れが来たと思ったら……



「雛」


隼人が私の名前を、静かに呼んだ…。




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