キスより甘くささやいて
はー、
ため息を吐いてベットを降りる。
1階では、母が起きて朝の家事をしている。
都内に通勤する父は、
電車の混雑が嫌いで、6時には家を出るからだ。
私は、部屋着にしている、白いTシャツとダボダボジーンズにカーデガンを羽織り、
「散歩に行ってくる」
と言って、家を出る。
長い階段を降り、海に向かう。
海沿いの道路は広めの歩道がずーっと付いていて、
犬の散歩やランニングする人達が結構通る。
駅前の海に面した駐車場から階段を降りると、砂浜に降りられる。
サーファーもけっこう多い。
階段の途中に座ってぼんやり海を眺める。
右に江ノ島。左に稲村ヶ崎。
今日は波が穏やかだ。
永遠に繰り返される波の音を聞いていると、
東京で暮らしていた事が昔の事になっていく日が来るだろうか?
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