キスより甘くささやいて
休日の前はあいかわらず、山猫で過ごす。
シルビアママは、私のエンゲージリングをじっくり見て、
「颯太、美咲にはもったいないんじゃないの?」と感想を漏らす。
まあ、プリンセスカットのしっかりしたダイヤは
ホワイトゴールドのたて爪の上のアーチににブランドの名前が彫り込んである。
どう見ても高そうだ。颯太は
「いいんだよ。幾つも買うわけじゃないんだから」と笑うと、
チョット不安な顔をした私の頬を撫でて、右手を握った。
「ンマー、美咲、羨ましい。
あんた達が別れたら、私が、貰ってあげるわ」と颯太を流し目でみる。
「春になったら、あんた達、離れ離れでしょう?
まあ、チャンスがないわけじゃ、ないって事ね。」と痛いところを付いてくる。
「まだ、離れ離れって決まったわけじゃないさ。
俺は諦めてないよ。」と握っていた手に力が込められる。
私は颯太に愛されている。そう思うと、とても安心する。
私は颯太の手を握り返し、ニッコリ笑いかけた。シルビアママは
「本当に美咲って、強情なオンナね。」と笑い、
「でも、颯太も、ワタシもそこが気に入ってるのよ。…困った事にね。」と朗らかに笑った。
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