キスより甘くささやいて
帰り道。
まだ、少し酔っ払っていたので、颯太に手を引かれて帰る。
住宅街に続く階段は酔っ払いにはチョットきつい。
颯太が溜息をついて私に背中を見せる。
「乗って」とおんぶですか?
私が首を横に降ると
「階段登ると、きっと、酔いが回るから、乗って。」
と眉間にシワを寄せて睨んでくるので、
すみませんと背中につかまった。
案外がっしりしている。

颯太は息も乱さず私を背負ったまま、階段をゆっくり上がる。
途中で、
「チョット休憩。」
と少し広くなった場所で降ろすと、私に向き直り、
「なあ、先輩とキスした?」
と不機嫌そうに私を見下ろしてくる。

今更、そんな事聞く?
私が見上げてチョット睨むと
「ムカつく」と小声で呟いてから、私の頭を抱いてキスをしてくる。
最初から激しく、舌を使って口の中を探り、舌を絡ませてくる。
音を立てて唾液を呑み下し、角度を何度も変えて、リップ音を響かせる。
長い。
私は思わず、声を漏らしてしまう。
颯太は私の小さな声に満足したのかゆっくりと、唇を離し、私を見つめて、
「上書き完了」と笑った。私は
「まだ、付き合っていないはずだけど」
と文句をいったけど、
拒否するつもりがないのはきっと見抜かれてる。
「可愛いヤキモチだろ。許しておけ。」
と笑って、背中を向ける。
私は颯太の肩に手をかけながら、
「今回は大目にみてあげる。」
と広い背中に身体を預けた。
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