キスより甘くささやいて
10月半ば。
颯太のお母さんの49日の法要が終わった日、
颯太から、電話があった。
「今日これから会えないかな。美咲が嫌じゃなければ今晩ずっと一緒にいたい。」
と落ち着いた声で話す。
「颯太の家に行く。
待ってて。お線香もあげたいし。」と笑った声で言うと、
「早く会いたい」と颯太も笑って電話を切った。
私はこれから颯太に抱かれることになるんだろう。と思った。
私達はお互いを求めているのが分かっているので、驚くこともない。
颯太はくちづけを重ねる度に
私の背中をもどかしそうに強く抱きしめるようになっていて、
いつも苦しそうに唇を離した。
きっと、お母さんの具合が急激に悪くならなければ、
きっと、とっくに身体を重ねてた。そう思う。
私達の心はお互いのモノだと知っている。
まあ、お互いの気持ちがわかっていても、
初めて身体を重ねるのは結構緊張するし、きっとものすごく恥ずかしい。
私はシャワーを浴びながら、
身につける下着と、少し女らしい服装について考える。
外に出るなら、少しだけオシャレしていきたい。
颯太に綺麗だと思われたい。
私はちょっと颯太の真っ直ぐに見つめてくる瞳を思い出して、
ひとりで顔を赤らめた。







< 94 / 146 >

この作品をシェア

pagetop