能あるイケメンは羽目を外す
楓?

考えるより早く身体が動いて、楓の声がした左手のエレベーターの方に走った。

楓のあの叫び声……ただ事じゃない。

何があった?

杉原にも楓の声が聞こえたのか、俺の後ろを走っている。

エレベーターに駆けつけると、営業の片桐が楓の髪を引っ張って彼女を引きずるようにエレベーターから出てきた。

それを目の当たりにした俺は、力一杯片桐の襟をつかんで彼女から引き離しす。

「何やってるんだ、片桐!」

左手で楓の肩をつかんでギュッと彼女を抱き締める。

チラリと彼女に目をやれば服は破れ、髪も乱れていて、顔は殴られたのか左の頬が赤く腫れ上がっていた。

「片桐……お前」

人に対してこんなに殺意を覚えたのは初めてだ。

片桐を憎らしげに睨み付けると、こいつも凶悪な顔で俺を見据えた。
< 246 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop