Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



『ハンバーグね。材料をそろえておきます。それじゃ、金曜日は離任式が終わったらすぐに帰るから、遼ちゃんも学校からそのままうちに来てね。』

『了解です。』


 最後の短いメールを受け取って、みのりはパタンと携帯電話を閉じた。……そして、頬を伝う涙を拭う。


 やり取りがメールで良かったと、みのりは思った。電話で話をしていたら、きっと涙声になって遼太郎にそれを気づかれただろうし、あんなに明るく受け答えはできなかっただろう。


 一人でいるときに遼太郎を思い浮かべると、決まって涙が溢れてくる。
 涙の原因は、みのりの中にある一つの決意。


誰よりも愛しい男性(ひと)――。
そして、誰よりも大事な生徒――。


 この小さな街を出て、これから大きな世界へと一歩を踏み出す遼太郎のために、その遼太郎が人間として大きく成長していくために…。
 そのことをみのりはずっと考えていた。

 そしてようやく、その決意が固まりつつあった。




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