Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜


 古庄ほどではないが容姿も整っており、この伊納から発せられる『どうだ!俺はイケメンだぜ!』というオーラと身のこなし、何と言ってもオトナのオトコの魅力に、多くの女子生徒たちは一目で瞬殺された。


 けれども、みのりが相手ではそうはいかない。
 近づいてきた伊納の黒いスーツに黒っぽいネクタイ、光沢のある黄金色のワイシャツとそれに合わせたポケットチーフ…。そんな姿を見て、みのりは呆気にとられた。


――…なに?この人!?……踏切みたい…!


 黒と黄色のコントラストは、みのりに踏切の警報器を連想させ、到底その目に〝カッコいい〟とは映らなかった。
 それに、いくらオシャレに気を遣っているとはいえ、伊納のこの姿は、まるで夜の街で活躍するホストのようで〝教師〟ではない。


 名前を呼ばれたので、みのりも立ち止まって伊納に目を合わせた。すると、伊納はまるで恋人のようにみのりに近づき、その耳に向かって囁きかける。


「今度、一緒に食事に行こうよ。」


 転任してきた伊納は1年部に配属されていて、3年部のみのりとはほとんど接点がないにもかかわらず、伊納は着任早々から、顔を合わせればこうやって誘いをかけてくる。

 まだ出会ったばかりで打ち解けてもいないのに、いきなりこんなふうに誘うなんて、みのりの感覚では人格を疑ってしまう。でも、逆に出会ったばかりなので、邪険にして人間関係を壊したくもない。


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