Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 実際、陽菜のこの能力に頼らざるを得ない場面も多々あり、遼太郎よりも佐山などは彼女に対する信頼を厚くした。そんな佐山の言葉を受けて恥ずかしそうにする陽菜だったが、その視線の向く先はいつも遼太郎だった。

 遼太郎は、陽菜に変な期待をさせないように特別にねぎらうことなどはしなかったが、複雑な思いを抱えながら、陽菜の行為を拒んだり否定することもしなかった。


 元々利発なことに加え、何にでも興味を持ち知識を増やすことを楽しむポジティブさ、可愛らしい笑顔をいつも絶やさない陽菜は、そこにいるだけで周りを明るくする。

 いつしか遼太郎や佐山や樫原の間にいることが自然となり、四人組で生協のランチに行くこともよくある光景となりつつあった。



 そんな変化を伴って迎えたこのゼミ合宿。

 3泊4日間、遼太郎と一緒にいられる陽菜はもちろん嬉しそうだ。遼太郎も自分がかねてより行ってみたかった場所に行けることもあって、気持ちは十分充実している。

 他のゼミ生たちも皆でワイワイやれるだけで楽しそうなのに、一人うかない顔をしていたのが、樫原だった。

 陽菜と付かず離れずの遼太郎と、すっかり気を許してしまっている佐山。
 大概の女の子とはすぐに打ち解けて仲良くなる樫原だったが、陽菜にだけは心に引っ掛かるものがあった。


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