あの日のきみを今も憶えている
園田くんは、顔を覆ったまま、続けた。


「続かねえよな。続かねえって、なんか分かるもんな」

「そんな、こと……」

「ない、って? いや、ヒィも本当は分かってるよな。この奇跡は、永遠じゃない。必ず終わりがあるって」


園田くんの声が、潤んだ。
肩が、カタカタと震えている。

広い背中が、とても頼りない。
その背中に手を添えようとして、ひっこめた。
ぐっとこぶしを作って、膝の上に置く。


園田くんが欲しい温もりは、私じゃない。


しかし、園田くんは片手を伸ばして、私の手を掴んだ。
痛いくらい、強く。
遠い感覚じゃない、はっきりとした、園田くんの熱。

ああ、遠くの蝉の声が、うるさい。
こめかみから顎先に、汗が流れ落ちていった。

あまりにも近い熱が、私の思考をマヒさせる。


「ずっと傍にいて欲しい」


園田くんの熱っぽい声が、とても近くから聞こえる。
マヒした頭はその言葉をきちんと処理できない。


「ずっと、美月に傍にいて欲しい」

「……うん」

「だけど、分かってるんだ。それが、叶わないって」


掴まれた手が、痛い。
園田くんは、私の手を離したらどこかに流されてしまうんじゃないかというように、強く強く握りしめてきた。


『すげえ怖いんだ』


園田くんは、私たちの前で見せていた笑顔の陰に、深い不安を抱えていた。
美月ちゃん以外の、私に掴まりたくなるくらいに……。


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