あの日のきみを今も憶えている
彼が言い出したのは、本当に、突然のことだった。


「陽鶴(ひづる)ちゃんは、オレみたいなバカは相手にできないんだよね。よく分かったよ」


それは、健全かつ、とても楽しかったデートの帰りだった。
私は最近ハマっている、抹茶ラテをズルズルと飲みつつ、「美味しいねえ」なんて可愛くつぶやいたばかりだった。


「は? なに?」

「陽鶴ちゃんみたいな可愛い子がオレと仲良くしてくれるなんて、って浮かれてたけどさ。もう、いいよ。オレ、陽鶴ちゃんとは釣り合わないんだって理解した! もう、連絡取るの止める」


飲みかけのカップに刺さったストローから口を離し、私は急に顔を真っ赤にして怒りだした男の子をびっくり顔で見た。


え?
意味わかんない。
だって今はドキドキ胸いっぱい的なデートの帰りのはずだ。

さっきまでとても充実した時間を、二人で過ごした。


私は今日という日をすごくすごく満足していたし、彼もきっとそうだろうと思っていた。
だから、今彼が言うべきは、こんな意味不明のことじゃないはずで。
ちょっと甘めの言葉なんかであってもいいわけで。


「ちょ、ちょっと待って。えっと、どういうこと?」

「どういうこと、じゃないよ。こんな遠回しに拒否されるの、マジで辛い」

「は?」


遠回しに拒否?
私が?
いつ?

きょとんとしていると、彼は大きくため息をついた。


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