桜の花びらの記憶
 まだ時間があるからと、カラオケにも行った。

 時々何か言いたげな表情をする、楽しそうなのに、どこか寂しげなお兄ちゃん。



 
 こんなに長い時間、お兄ちゃんと一緒にいられたのは初めてだった。




 少しづつ白んでくる空。

 海の方に車を走らせ、初日の出が見やすいところに車を停めた。

「お兄ちゃん降りようよ」

「え?寒いんじゃないか?」

「平気だよ」

 車から出た私は冬の海の冷たい風にさらされた。

「さ、寒っ」

「だから言ったのに」
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