桜の花びらの記憶
「正月に由梨と、初日の出を見に行ったおかげかなあ」



 あの頃、お兄ちゃんは成績が思うように上がらず、この大学は無理だと言われていたらしい。

 それでも、何としてもこの大学に行きたい。

 その一心で必死に勉強していたのだ。

 ずっとずっと小さいころからのお兄ちゃんの夢がかなったんだ。

 高三だもん、今みたいに一緒に登校できるのは、この一年間だけだってことはわかっていたはず。

 でもまさか、こんなに遠くの大学に行くなんて。

 いや、それも今までのお兄ちゃんの話を聞いていたらわかったはずだ。

 バスケの方を目指していたことは知っていたのだから、きっとどこかで分かっていた。

 わかっていて知らないふりをしていた。
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