溺愛ドクターは恋情を止められない

「すごい数だったんだな」


受付表をチラッと見た高原先生がつぶやく。


「そう。朝からコール鳴りっぱなし。心筋梗塞に交通事故。低血糖と熱性けいれん。あとは……」


先生達がさばいた症例は、こうして掲げると驚くほどの数になる。


「そうか。お疲れ」

「うん。そろそろ交代の時間ね。食事にでも行かない?」


酒井先生が高原先生を誘うのを間近で耳にすると、途端に心臓がドクドクと音を立てはじめる。


「あー、悪い。カンファレンスがあるんだ」

「そっか。残念。それじゃ、また今度」


酒井先生は、スタッフルームに入って行った。


カンファレンスって……。
さっき私を誘ったときは、日勤だけで帰れると言っていたはず。


「それじゃ、お疲れ」


高原先生も、救急を出ていく。
どうして酒井先生の誘いを断ったのか、聞きたくても聞けるわけがなかった。
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