溺愛ドクターは恋情を止められない
「なに? ドアを開けて欲しいの?」
「いっ、いえ」
クスッと笑う高原先生は、「それじゃ、どうぞ」と本当にドアを開けてくれる。
なにがなんだかわからないうちに、彼の車に乗ることになってしまった。
「名前は?」
エンジンをかけ、アクセルを踏み込んだ先生は、チラッと私に視線を送って再び前を向いた。
「えっ?」
「だから、松浦、なんていうんだ?」
そういえば、今日は朝から患者が途切れることがなく、まともに自己紹介すらしていない。
「都です」
「俺は高原奏多(かなた)。もう、知ってるか」
なんだか白衣のときとは、随分印象が違う。
「俺、こんなに早く帰れるの、すっごい久しぶりなんだ。飯、付き合ってよ」
「えっ、私?」
「他に誰がいるの? あっ、金曜だしデートの約束でもあった?」