溺愛ドクターは恋情を止められない
私から離れて行った彼は、ポケットに手を入れ……。
「印、つけておいていい?」
「えっ?」
「俺、意外と独占欲が強いらしい」
私の左手をとった彼は、薬指に指輪を差し入れた。
「これ……」
ジワッと涙が溢れてくる。
泣くまいと必死に我慢していたのに、サプライズの連続に、涙腺はとうとう崩壊した。
キラキラと煌めくダイヤが、薬指に輝いている。
いつの間に用意したの?
「必ず都のところに帰ってくる。だから、待っててほしい」
もう声も出ない。
何度も何度もうなずくと、彼は私を強く抱きしめた。
そして、出発の前日。
野上総合を一旦退職した彼は、一緒に母の墓参りに行ってくれた。
「都さんを必ず幸せにします」
黙って手を合わせていた彼が、突然そうつぶやいたとき、血だらけの母ではなく、笑顔が頭に浮かんだ。