溺愛ドクターは恋情を止められない

一方の小谷先生も、いつものおちゃらけた姿からは、想像できないような働きっぷり。
テキパキと患者を診察し、ナースへの指示出しも明確で、どのナースからも働きやすいという評価を得ていた。


「あー疲れた。もう限界。松浦ちゃん、肩もんで」


小谷先生は、患者が途切れると、途端にこの調子。
疲れたなんて言いながら、一番元気なのに。


「あら、小谷先生。肩もみは、師長がすごく上手よ」


隣をクスッと笑いながら通り過ぎる、酒井先生。


「あら、呼びました?」


そこにタイミングよく顔を出す看護師長。
超ベテランで、ドクターに指示を出せる唯一の人。
救急の陰の支配者といったところだ。


「いえ、なんでもありません」


突然小声になる小谷先生の姿に、その場にいた人全員が、肩を揺らしながら笑いをこらえている。

小谷先生は、殺伐とした救急に笑いを運んでくれるムードメーカー。
彼がいることで、緊張ばかりのこの場所も少し息抜きができるから、本当は皆喜んでいた。
< 60 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop