カミヲリ
「ユエの為……だもんね」

カスミは観念したように呟く。


「そうだよ! もしかしたら、その日はいないかもしれないし」

アシタは柔らかく笑う。


「まあ、そうね。悩んでいても仕方ないか」

カスミはそうひとりごち、新聞コーナーから新聞をとる。


「あ、カスミちゃん?」

アシタはもう一度、カスミの名前を呼ぶ。


「何?」


「なんでも……ないや。ごめんね」


「ふーん」

カスミは新聞を捲りながら曖昧に相づちをうつ。


アシタはそっと、一枚の新聞紙を後ろに隠す。


「ごめんね」

誰にも聞こえないようにアシタはそっと呟いた。


隠された新聞の見出しには「神隠し」と書かれていたのを、カスミは知らなかった。
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