30分の待ち時間
プロローグ







定期券を使って改札を通り過ぎ、ホームへ続く階段を上る。

電車が来るのは10分後。

この駅は田舎の駅じゃなく、快速電車も止まるような大きな駅。

そのせいなのか、もうすぐで4時をまわる時間なのに、人は結構多い。

もうすぐで帰宅ラッシュの時間だろうな…と思い、朝の満員電車を思い出して憂鬱になった。



整列乗車の1番後ろに並ぶ。

肩に掛ける鞄にはいった、朝買ったペットボトルのお茶を飲んでいると、快速電車が来た。

しかしあたしは、快速電車に乗らないで、動き出した整列乗車の1番前に立ち、快速電車を見送った。



あたしの学校の最寄り駅は、こうして快速電車も停まる大きな駅だけど。

あたしの自宅の最寄り駅は、快速電車なんて停まらない、比較的小さな駅。

だから快速電車なんて乗ってしまったら、あたしの駅はバイバイになってしまう。

それを防ぐため、あたしは各駅停車をこうして待っているのだ。



別に快速電車に乗っても良い。

途中で乗り換えすれば良い話。

普段快速電車で家に帰るのだから、乗り換えは慣れたもの。

幸い帰宅ラッシュは始まっていないようで、電車の中も人はいたけど、朝に比べたらマシだった。



だけどあたしは見送った。

今日は、今日だけは、地道に各駅停車に乗って帰りたかったから。

各駅停車は着く時間は遅くなるけど、確実に座れるのだ。

今日は座ってのんびり帰りたい。




今までずっと飲んでいたペットボトルのお茶を、鞄へ仕舞ったところで、お目当ての各駅停車がホーム内にやってきた。

あたしの予想通り、人は少なめ。



降りる人さえもいなかったので、あたしはすんなり中へ入り、1番隅の椅子に腰かけ、鞄を膝の上に置いた。





そして目を閉じた。









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